オリンピックまでに国旗に親しもう
国旗についてのお話
STORY

3つの旗が合体して「ユニオン・ジャック」に

イングランドは17世紀の初め、スコットランドとの同君連合となり、エリザベス1世をともに戴きました。そこで、それまでの両国旗を合体させて「ユニオン・フラッグ」、親しみを込めて「ユニオン・ジャック」(ジャックは船首に掲げる旗)としたのでした。それから200年を経て、1800年にアイルランドも合併して、もう1つの旗が合体したのです。「ユニオン・ジャック」は1606年4月12日にまず、イングランドの守護聖人である聖ジョージの旗(白地に赤十字)とユコットランドの聖アンドリューの旗(青地に白の斜十字)が合体して最初の「ユニオン・ジャック」となり、1801年1月1日(グレイト・ブリテン及びアイルランド連合王国成立時)にさらにアイルランドの聖パトリックの旗(サルタイア、白地に赤の斜十字)が合わさって現在の国旗になったのです。アイルランドのナショナリストの中には、このサルタイアを含む「ユニオン・ジャック」は英国が勝手に決めたもので当時のアイルランド人が是認したか怪しいものだという声も、結構強いのです。

ダブリンを中心とするアイルランドの人たちは長年の分離独立闘争を経て願望が適い、1934年にその大半が共和国として英国から離れましたが、ベルファストやロンドンデリーなどアルスター6州とよばれる北アイルランドだけは、英国に留まりました。

ですから、この時に「ユニオン・ジャック」からサルタイア(聖パトリックの旗)が消えることはなく、英国の正式な国名は「北」を加え、「グレイト・ブリテン及び北アイルランド連合王国」となりました。38年、アイルランドは英連邦内の共和国として、実質的元首の大統領と儀礼的君主の国王の双方を戴くという形で名実ともに独立しましたが、49年、英連邦を離脱、完全な共和制に移行しました。

しかし、72年にはロンドンデリーで市民14人がイギリス軍に射殺された「血の日曜日事件」が発生しました。90年代になると北アイルランドではカトリック教徒を主とする人々と英国国教会系のとの間で内戦状態になりましたが、98年、「ベルファスト合意」が成立、直後の国民投票により、アイルランドは北アイルランド6州の領有権を放棄しました。「血の日曜日事件について」英国政府が公式に謝罪したのは、40年近くを経た2010年6月15日、今のデイビッド・キャメロン首相によるものでした。

これで「ユニオン・ジャック」は安定したかに見えましたが、より大きな課題としてスコットランドの分離問題が起こりました。エディンバラやグラスゴーなどブリテン島の北部3分の1がスコットランドとして独立しようというのです。スコットランドは伝統的に労働党の支持者が多く、トニー・ブレア、ゴードン・ブラウンと2代続けてスコットランド出身者が労働党首となり、英国の首相となりました。

他方、スコットランド独立を掲げる民族主義的なスコットランド国民党(SNP)の支持者も多く、14年9月、スコットランドで独立の可否を問う住民投票が実施され、44.7%対55.3%で独立は否決されました。当初の予想は「大接戦」。少し差が開いたような結果でしたが、独立志向はまだまだ沈静化したわけではありません。地方選挙では独立支持派が多数を獲得しましたし、英国の将来像は計り知れないものがあります。


ウェールズの旗

ところで、英国旗「ユニオン・ジャック」のジャックとは、「小さくとも頼りになるヤツ」のことかな。たまにお世話になるのが自動車のジャッキ(jack)。物の下に置かれてその物自体を支えたり、持ち上げるために使われる道具、機械、装置ですよね。日本語では扛(こう)重機(じゅうき)と言うのだそうです。「押し上げ万力」とでもいうほうがいいんじゃないかな。

カード(トランプ)のジャックは11に相当するカード。若者という意味で使うこともあります。Jack in the cellar(おなかの子)、「Jack of all trades and master of none(諺)何でもできる奴に優れ者はいない」。「太郎くん」といった感じかも。国旗で言えば、本来、船首旗、国籍旗になります。船籍を示す、船の舳先につける小旗のことです。舳先にこの旗をつけて海外雄飛し、イギリスは「太陽の沈むことなき大英帝国」と呼ばれていたのです。

ところで、英国を構成するもう1つの要素であるウェールズが「ユニオン・ジャック」に反映されていないというのが、ウェールズの人達の大部分の不満です。中世には矢を長距離に飛ばす長弓(ロングボウ)で勇名をはせ、婚姻関係を通じ、チューダー朝のヘンリー7世を佇立したという矜持もあるのです。

しかし、1536年にはほぼ完全にイングランドの1構成要素となり、その後も、石炭をはじめ豊富な地下資源を産出し、イギリスの産業革命を支えた実績を持ち、アイデンティティの高さは今日まで続き、ウェールズでは英国旗よりも、より多く、独自のドラゴンの旗を国旗として掲揚しているのです。