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不安定な「ユニオン・ジャック」

2016年6月23日に英国全土でEU(欧州連合)離脱の可否を問う国民投票(レファレンダム)が行われます。これをめぐり与党・保守党内が分裂状態になり、残留をめざすキャメロン首相に対し、ロンドン市長のボリス・ジョンソンは離脱を唱えています。ジョンソンが2歳上の51歳、二人は全寮制の名門校イートン校から名門ケンブリッジ大学に進んだ頃から、ともにリーダー格で周囲からは「永遠のライバル」と見なされてきたそうです。キャメロンの全員の党首でうしろだてでもあったマイケル・ハワードも離脱派です。

保守党は2020年の総選挙までに次期党首を決めることになっていますが、国民投票で離脱が多数となればキャメロン首相の自身は免れないでしょう。ただ、そうした党内事情もさることながら、離脱を米国にとっても「極めて好ましくない」と発言する人もいます。例えば、リチャード・ハース米外交問題評議会議長です。

18世紀の末にイギリスから飛び出したアメリカ人にそうは言われたくないと残留派の人たちは思うかもしれませんが、最も近い同盟国であるアメリカが「相応の遺憾の念と懸念を抱かざるをえない」(同議長)とし、「欧州における英国の役割や影響力の低下、やや薄まりつつある米英同盟の行方、英国が抜けたEUにおけるドイツの一層の影響力の増加、そして世界における米国の役割の縮小を主張する米国内の人たちを勢いづかせることを懸念する」と続けています(2015年2月28日付 読売新聞への寄稿)。

英国がEUから離脱するとなると、今度は2014年の住民投票でかろうじて英国に残留したスコットランドの分離・独立も再燃しかねません。スコットランドでは「EUに留まるための独立」論が説得力を増すでしょう。

さらに、ハース議長も指摘していますが、英国のEU離脱とスコットランドの分離が成れば、北アイルランドでは英国による統治存続を望む「ユニオニスト」と「アイルランドへの併合を望む共和派の感の摩擦が強まってゆく、北アイルランドの最終的地位をめぐる論議に再び火がつくことになりかねません。

そうなると、210余年続いてきた今の「ユニオン・ジャック」が形を変えたり、消えたりしかねませんし、それは世界の英連邦諸国の国旗にも影響を与えないわけにはゆかなくなるのです。未来を大胆に予測するなら、もし、スコットランドが別の国になったら、「ユニオン・ジャック」から聖アンドルーの十字が消え、その結果、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、ツバル、クック諸島、ニウエなどの国旗も変わるかもしれません。

もしそうなったら、2020年の東京オリンピックでの国旗は1964年の東京オリンピックへの参加94カ国に限っても半分を超える国旗が変ってしまうことになりかねません。

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