こうした試みに比べれば、アドリア海上のローズ共和「国」はまだましかもしれません。イタリア北東部にある山国サンマリノの入口にに位置する港町・リミニの沖11キロメートルに出現したのが、ローズ共和「国」です。建「国」したのはイタリア人のジョルジオ・ローザ。国名はこの大統領に由来だけではなく、「海上の花園」を目指したものなのだそうです。なるほど、「国旗」は3つの薔薇の花です。
領海外300メートルの浅瀬に作った人工島で、面積400平方メートル。68年6月24日が独立記念日。イタリアでは1859年のこの日、ソルフェリーノの戦い(イタリア統一戦争での決戦)でオーストリア軍を撃破したことで知られる日ですから、それに合わせたのかもしれません。
ローズ共和「国」には売店、レストランがあり郵便局、切手がありました。、カジノを作る構想もあったようです。通貨を「ミル」と定めましたが、紙幣や コインの発行までには至りませんでした。公用語はエスペラント語で切手はエスペラント語で表記されていました。ローザ大統領は5人の大臣を任命しましたが、「国内」には大統領も大臣も居住せず、ピエトロ・ベマルディニという男が島にたった1人で住んでいたとか。
イタリア政府は「カジノで稼いだ金を脱税しようと企んだ」と決めつけ、独立宣言とともに警備艇で「海上封鎖」を実施、55日後にはイタリアの武装警官と税務調査官が上陸して占拠した。ローザ大統領はイタリアによる「軍事侵略と主権侵害」を非難するとともに、「イタリアも批准した公海利用の自由を定めたジュネーブ公海条約によれば、公海での利用は自由なはず」と主張 したが、イタリア政府は「公海上に構造物を作ることによって、他者の自由な利用を妨げている」と反論。結局イタリアの最高裁は人工島の取り壊しを命じる判決を下し、69年にイタリア海軍によって島は爆破されてしまいました。