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はじめに

2016年のリオデジャネイロ五輪に続き、18年には韓国のでの冬季五輪、そして20年には56年ぶりに東京でのオリンピックです。1964年の東京五輪の際、私はそれまでに2冊ほど国旗に関する著作があるというだけで、組織委競技部式典課国旗担当専門職員としてスカウトされました。まだ学生でしたし、「IF」(国際競技連盟)といった言葉さえ知らず、今から思えば我ながらよく務まったものと思います。しかし、当時は怖いもの知らず、上司に恵まれたこともあり、好きなだけやらせていただき、大いに勉強させてもらいました。それなのに、実はこの時のことが、今度発行される小学校5年生の教科書、それも「道徳」に掲載されるというのですから、冷や汗ものです。

しかし、当時、組織委で最年少だった私もこの春、後期高齢者となり、当時、大いに活躍された方たちの中には病臥にあったり、さらには鬼籍に入られたりという方も数多く、時の流れを痛感するばかりです。

東京五輪から8年後の札幌冬季五輪に参加したのは35の国と地域。欧米先進国がほとんどで、この間に国旗が変わった参加国はカナダくらいのものでした。ですから、組織委に助言や提言した程度でした。次の98年の長野冬季五輪には72の国と地域から参加しましたが、組織委の儀典担当顧問として1年半、国旗の発注や掲揚に心を配り、開会式の進行にも少し口を出し、関わりました。

五輪であれ、国際会議であれ、国旗の取り扱いというのは間違いが許されないことは言うまでもないことです。わが国では58年の第3回アジア大会で中華民国(現・台湾、当時は国連安保理常任理事国)の国旗を表彰式で逆さまに揚げてしまったのです。組織委の幹部が宿舎の新橋第一ホテルに駆け付け、文字通り、土下座して詫びたと聞きました。

ほかにも最近のテレビ番組では、ペリーが浦賀にやって来たという1853年の場面で、31星のはずの「星条旗」が、今の50星(ハワイの州昇格で1960年に50星になった)のになって掲げられていたり、英国の「ユニオン・ジャック」が逆さまだったり、伊勢志摩サミットに関連して広島で開催されるG7外相会議のポスターやチラシのイタリアの国旗の赤がオレンジ色になり、どう見てもアイルランド国旗にしか見えないように印刷されて、全部刷り直したそうです。このように、国旗に纏わっては実に多くのトラブルがあります。

2020年の東京五輪ではよもやそんな失敗はないでしょうが、念には念を入れ、オール・ジャパンの知恵と力を結集して、今度は国旗でトラブルなどということのないよう、関係者にお願いする次第です。もちろん、新設のNPO法人世界の国旗研究協会の責任者としてもできることなら何でも協力する所存です。

各国の「国旗は情報の宝庫」であり、「国旗を知ることは国際理解の第一歩」です。読者の皆さまが、本書で国旗の面白さや深さに触れられ、一層のご関心寄せ、ご理解をいただければ、次回からのオリンピックを何倍も楽しむことができるものと確信します。

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