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世界に国はいくつある

2020年7月24日は次の東京オリンピック開会式の日です。前夜の豪雨がうそのようにはれ上がり、NHKの北出清五郎アナウンサーは「世界中の青空を集めたような快晴」と実況中継していましたが、世界中から大勢の若者が東京に集まったことは確かで、国立競技場貴賓席の真下にある式典本部で、私もまた若者らしい興奮と緊張を感じたものでした。

前回の東京オリンピックに参加したのは94の「国と地域」(以下、国)でした。その後、ソ連邦が15に分かれたり、ユーゴスラビアが7つの共和国になったりしたこともあり、国連加盟国もこの52年間に115カ国から193カ国に増えました。

2008年の北京と2012年のロンドン五輪に参加したのは204の国。その後、コソボ、さらに最近では15年8月、南スーダンにNOC(各国のオリンピック委員会)ができ、16年のリオデジャネイロ五輪にはIOC(国際オリンピック委員会)の全加盟国206カ国が参加することになるでしょう。これにより、国連加盟国すべてにNOCが置かれたのです。 

さらに今回は「難民選手団」が五輪旗と「オリンピック賛歌」で特別に参加することになりました。朝日新聞(2016年3月3日付)によれば、IOCは難民支援に200万ドル(約2億2千万円)を拠出して43人のを支援しているが、その中から5~10人の難民選手が独自のチームを構成し、主催国ブラジルの前の位置で行進することになるようです。

それに加えて、国連には加盟していない13の地域にNOCがあります。まず台湾(中華民国)。1971年、国連での中国代表権が大陸の中華人民共和国へと移ることとなり、台湾は国連から脱退しました。それ以前、主要国では64年にフランス、70年にカナダが大陸政権を承認していましたが、国連の議席が移譲してからは72年に日本と西独、79年に米国、92年に韓国、97年に南アも政策を転換し、中華民国の国際的な孤立が深まりました。69年には中華民国と国交のある国は68カ国あったのですが、2016年3月現在、台湾と正式な外交関係があるのはバチカン、中米、カリブ海諸国など22カ国に激減しました。パラオも台湾と外交関係を維持し、前の首都で最大の市街のあるコロールに行くと、日本時代からの裁判所、野球場、放送局などの建造物と近年、台湾の援助で造られたインフラを見ることができ、台湾からの大勢の観光客で賑わっています。


中華民国(台湾)の「青天白日満地紅旗」

国際スポーツ大会用の旗。
オリンピックでも使用する。

台湾独立運動の旗

中華民国はその後、外交を弾力化し、国交のない国との間で貿易などの実質的関係を発展させるべく、「代表処」や「弁事処」を59カ国と香港・マカオに設けて、事実上、大使館や総領事館の業務を行っているのです。わが国には東京に代表処があるほか、横浜、大阪、福岡、那覇、札幌には弁事処や分処を設置して外交、経済、文化活動を行っています。

この元国連安保理常任理事国が、今では、「チャイニーズ・タイペイ(Chinese Taipei)」としてのNOCが認定され、国旗ではなく梅の花(国花)に「青天白日」と五輪を描いた旗で特別にオリンピックへの参加が認められています。

また、中華人民共和国の特別行政区である香港は、「中国香港(Hong Kong, China)」としてNOCが承認されています。アメリカ合衆国はUSAとしてのNOCのほか、海外領土である自治領サモア、準州グアム、プエルトリコ自治連邦区、米領ヴァージン諸島(保護領)として4地域のNOCが個別に承認され、それぞれから「星条旗」とは別の旗を掲げた選手団がオリンピックに参加しています。グアムはWhere America’s Day Begins(アメリカの一日が始まるところ)を標語にしています。日付変更線に一番近い米領の準州ということでしょう。しかし、近年、グアムではグアハンGuahan(原意は、われわれのもの)と名前を換えようとか、独立すべきだという運動も起こっています。


プエルトリコ(米領)

米領サモア

米領ヴァージンアイランド

グアム(米領)

バミューダ諸島(英領)

アルバ(蘭領)

同じように、イギリスの海外領土ではバミューダ諸島、英領ヴァージン諸島、ケイマン諸島の3つの地域にそれぞれNOCがあります。バミューダは前回の東京五輪にもヨット競技にのみ参加しましたが、当時の国旗は今の赤の部分が青のブルーエンサインでした。

オランダ(蘭)の海外領土では現在、ベネズエラの沖にあるアルバにNOCがあります。1964年の東京五輪に参加した蘭領アンティル(カリブ海)のNOCは2010年の自治領の分離解体に伴い消滅し、新自治領となってからはいまだNOCが創設されていません。

ニュージーランドと提携国家の関係にあるクック諸島にも独立したNOCがあります。日本政府は東日本大震災の直後、南太平洋のクック諸島を国家として承認しましたが、国連には未加盟です。クック諸島は国連加盟国のうち31カ国、それにバチカン、EUと外交関係を持っています。大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』は南クック諸島のラロトンガ島で撮影されました。

パレスチナとコソボのNOCは認定されています。パレスチナの代表部は日本にありますが、日本政府は国家としては承認していません。2012年にパレスチナは国連総会の「オブザーバー組織」から「オブサーバー国家」に昇格しました。

日本をはじめ国連加盟193カ国のうち111カ国と、台湾およびマルタ騎士団政府はコソボを国家承認していますが、ロシアやセルビアの強い反対があり、コソボは未だ国連加盟にはいたっていません。

2015年5月15日、日本は閣議でニュージーランドの自治領だった同じく南太平洋の島ニウエを国家として承認することを決定しました。これでニウエは12カ国と外交関係があり、34の国際機関に加盟していることになります。

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