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「秩序と発展」がブラジルの国標

ブラジルの国旗の中央には、フランスの社会学者で哲学者のオーギュスト・コント(1798~1857)の言葉「ORDEM E PROGRESSO(秩序と発展)」が書かれています。リオ五輪の準備や進行ぶりを見ていると、必ずしもこの国標のようにはいっていないようですね。

この言葉が描かれた背景には、ブラジルが共和政に変わった1889年当時の政府首脳の多くがコントの主唱する実証主義positivismの信奉者だったことを反映した結果です。、実証主義とは狭義にはコント自身の哲学的教義を指し、広義には、経験的事実に基づいて理論や仮説、命題を検証し、超越的なものの存在を否定しようとする立場をいいます。Positiveは、「神によって置かれた」を意味するラテン語positiviusに由来し、実証主義におけるpositiveは、経験的に裏付けられたものを意味するのだそうです。

したがって、実証主義は神学的・形而上学的なものに依拠せず、経験的事実にのみ認識の根拠を認める学問上の立場であり、コントよって人類の発展における神学的段階と形而上学的段階の最後に来る実証主義的段階として唱えられたものです。

それにしても、リオデジャネイロのオリンピックの準備や運営を見ても、はたしてこの次世代の大国ブラジルは「秩序ある発展」を遂げているかどうか、五輪開会式を見に行った私はかなりの疑問を感じざるを得ないのです。

ブラジルではポルトガル王家のペドロ1世と2世とが独立以来、国家元首となっていましたが、国民は完全な独立を希望し、それを受けた軍人デオドーロ・ダ・フォンセンタが帝政を倒し、共和制が成立し、自ら初代大統領になりました。そこで、新しい国旗にということになり、新政府の財務大臣であったルイ・バルボーザはアメリカの「星条旗」をもとにした新国旗案を発表しました。それは、13本の横縞(緑7本と黄色6本)とカントンに21の星を配したデザインでした。しかし、これではあまりに「星条旗」に似ているとフォンセンカ統領が難色を示し、拒否権を発動したため、この旗は1889年11月15日から19日までの4日間のみ使用されるという世界最短記録の国旗で終わったのでした。

フォンセカはこれに代わって帝政時代の国旗から色を採って新国旗を作成することを提案、ブラジル実証主義使徒の会のハイムンド・テイシェイラ・メンデス会長とミゲル・レモス同会員、リオデジャネイロ工科学校のマヌエル・ペレイラ・ヘイス教授が現在の旗のデザインの基本となる意匠のものを発案したのです。早速、これが画家のデシオ・ヴィラレスによって描かれ、11月19日に国旗として制定されたのでした。

ですから、ブラジルでは11月15日は共和政宣言の日、同19日は国旗の日と定められています。ちなみに、11月15日はさまざまな選挙を行う日として定着していましたが、最近は投票日がかなり流動的になって来ているようです。

制定当時のブラジルの国旗は州の数を反映して21の星が描かれていましたが、1960年、68年、92年に星の数が増え、現在では27個の星になりました。アメリカの「星条旗」と違うのは、ブラジルの国旗では一つひとつの星がどの州を表すか決まっており、ブラジリアはGの文字のすぐ下にある南極星といわれる星で表されているのです。

要するに、ブラジルの国旗の星はアメリカの「星条旗」と同様、州が増えれば星の数も増えるのですが、その配置は自然界の星空を写したもので、「星条旗」のようにデザイン的に配列したものではないということです。

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