南十字星、正しくは南十字座というのでしょうが、多くの探検家たちが目印にしてきた星座です。日本からはほとんど見えません。わずかに沖縄県の波照間(はてるま)島(居住者のいる日本最南端の島)の小さな天文台から水平線のすぐ上に見える程度です。それでも、宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』の中この星座に触れています。すなわち、北十字を起点に天の川を行く銀河鉄道の旅の終わりに南十字星を登場させるのです。また、天樹征丸、金成陽三郎による『金田一少年の事件簿(怪盗紳士の殺人)』では南十字星が見える島が重要なポイントとして描かれています。南に憧れる思いを抱く人にとって南十字星は何となく神秘的で憧れの対象ともいえる星だということでしょうか。
香港、台湾、シンガポールなどに行かれたとき、是非、ネオン街を離れ、天空を仰いで眺められるとよろしいかと思います。私はバングラデシュやベトナムで戦争が行われていた1970年代の戦場に、国際赤十字の代表として赴任していましたが、何度もこの星を仰いでは人間の争いの虚しさや儚(はかな)さに長嘆息したものでした。
国旗としては、豪、NZのほか、PNG(パプアニューギニア)、サモア、ニウエそしてブラジルの国旗に南十字星が出てきます。ブラジル国旗の星座が左右逆になっていることは天球儀によるものだからということは既にページで触れました。