政府や公的機関、外交使節、国連本部などで掲揚する国旗を、一くくりに「政府旗」というには無理があります。国によって、GOVERNMENTAL FLAG、OFFICIAL FLAG、DIPLOMATIC FLAGなどということもありますが、これが微妙に、掲揚条件が違うのです。GOVERNMENTAL FLAGなら政府専用ですが、OFFICIALとなると各国NOCがオリンピックではこっちを使ってくれと紋章付を所望してくるという例が多いのです。
ちなみに、在京フィンランド大使館(麻布)の場合を見てみましょう。構内に掲げているのはEU旗と政府掲揚用の国旗。後者の中央にランパント(立獅子)の国章が付いています。
駐日フィンランド大使館の国旗
駐日フィンランド大使館
駐日ドイツ大使館で掲げる国旗
オーストリア大使館の国旗
ポーランドの公的機関が掲げる国旗
ウクライナの公式旗
英国大使の公用車に掲げられている大使が使用する国旗。
2016年1月、国際文化会館でご一緒したときに撮影。
ドイツは政府機関には紋章付を使用することが多いのですが、国連では紋章の付かない国旗を揚げたり、つけたりまちまちです。オーストリアは紋章付を全政府機関が使用しています。ポーランドも実際にはそれに近いのですが、公式には決まりがありません。
ロシアもクレムリンには双頭の鷲の付いた白青赤の横三色旗が掲げられています。
私ももっと調べる必要がありますが、例えば、フィンランド大使館の場合は室内では紋章なしを使っています。ペルーの国旗は政府のみ紋章付の国旗を使用すると言いながら、オリンピックでも紋章付を使います。おそらく各国で政府が使用するものと民間との厳密な線引きがないのではないでしょうか。ウクライナではキエフ空港の売店でまで鉾のついた政府旗がお土産用に売られています。
駐日英国大使館は、日英同盟時代(1902~23)からというだけあって、皇居の半蔵門前の広大な面積を占めています。そこに翻っているのは大使専用の「ユニオン・ジャック」。国旗にいくつかの種類がある典型が英仏独の3カ国です。すなわち、フランスは海上用の国旗の三色の幅が等分ではなく、ドイツは政府公館庁が用いるのは鷲の紋章付なのです。
ここで取り上げた6カ国はオリンピックでは紋章なしを使用します。しかし、在外公館や国連では紋章を付けたがります。おそらく国によってはいつ、どのデザインの国旗を使用するのかの厳密な線引きがないか、あまり重視していないため、実際にはかなりあいまいなのではないか、と私は思っています。