お手元の五円硬貨(五円玉)を見てください。
このデザイン1959年からのものです。表面の稲穂は農業を表し下部の水のデザインは水産業、穴のまわりのギザギザは歯車で工業を表しているのです。裏には林業を表す木の芽が2つ描かれています。この五円玉、実は重さが3.75グラムなんです。これすなわち1匁であり、かつての1文銭の重さと同じというのが、にくいですね。
2008年、私は尊敬する古川清氏から、ワニ革のベルトとお財布をいただきました。減量のお祝いでベルトというのはしゃれてますよね。お礼の電話をすると、「財布に五円玉を入れるの忘れちゃった」と言うのです。もったいなくてしばらく使えず、とりあえずは自分で五円玉を入れて飾ってあります。「五円」がいい「ご縁」に通じることを願いつつ。
ところで、この通貨、漢数字ばかりで、アラビア数字がないですね。そんな硬貨はほかにありませんよね。非漢字圏の外国人観光客の間などでは、混乱するんじゃないでしょうか。また、欧米には穴開き硬貨が少ないので、昔はよくお土産に持って行き、結構喜ばれたものです。
それにしても、稲穂と歯車…は、私はアンゴラの国旗、ミャンマー(ビルマ)の旧国旗、ハンガリーの旧国旗、ブルガリアの旧国旗などを連想します。昔の東ドイツの国旗には麦の穂(農民)、ハンマー(労働者)、ディバイダー(知識人)からなる紋章が付いていました。そして中国の国章です。
ミャンマーの国旗。ビルマといっていた時代にはこのマークの部分に、大きな白い星1つと少数民族を表す小さな星が5つ付いたものでした。
赤や黄色の星がついた国旗はかつてソ連、ユーゴスラビア、ブルガリア、ルーマニア、アルバニア、モンゴル、モザンビークなどたくさんありました。それが今では中国、ベトナム、北朝鮮の3カ国の国旗だけです。誰ですか「絶滅危惧種」などというのは。それは鰻のことでしょうが。
1975年、独立当初のモザンビークの国旗。
農民、兵士、知識人のシンボルがある。
中国の国章にも農業と工業のシンボルがある。
1959年に始まった「五円硬貨」、ソ連が初の人工衛星を上げ、ガガーリンやテレシコワが宇宙飛行して、社会主義が礼賛された時期だっただけに、日本もその影響を受けたんでしょうか。「五円硬貨」を見ながら、このデザインはそろそろ変えるべきではないのかと、社会主義者でもなく、中国に媚を売る政治家を軽蔑する筆者は思うのですが、いかがでしょう。
ミャンマーの国旗。軍事政権が2012年まで掲げたもの。
歯車と稲を描いた珍しいデザイン。
星が、少数民族とその団結や統一を表わしているというデザインの国旗というと、私には1989年から2012年までミャンマーの軍事政権が用いた国旗が思い出しました。赤地の旗のカントンが青くて中央に大きな白い星(ビルマ族・人口の68㌫)があり、それを取り巻く5つの小さな白い星はシャン(9%)、カレン(7%)、ラカイン(3.5%)、モン(2%)、カチン(1.5%)といった少数民族を表わす。ミャンマーにはこのほかカヤー、中国系やインド系の人たち、チン、ワ、ナガ、イン、ラフ、リス、トーアンといったさまざまな少数民族がいるのです。