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いつの場合も国旗は納品検査がとても重要

2020年の東京オリンピックでどの旗布がいいのか、実は、老生は勝手に苦慮しているのです。①前回の東京五輪で使用した東洋紡のエクスランの旗布が十分に出回っていないこと、②積水化学が開発したエスロンのようなポリエステル系がこの半世紀で旗布としてはずいぶん完成されていること、③戦時中、大量の「日の丸」や軍艦に等、旗づくりにあたった職人は大勢おり、前の東京五輪当時はそうした職人がまだ多数働いていたことです。それが、今では縫製工が極端に不足しており、50年前のようにエクスランの原反縫い合わせで三色旗など多くを製作できるとは考えにくいことなどが理由です。インクジェット方式でバンティング(旗布)を表裏からどれだけ上手く、かつ、堅牢に染められるか、未だ日本では経験が乏しいと言わざるを得ないのです。

そこで繊維メーカー、旗屋、染物屋、縫製会社のみなさんの知恵と力を結集してオール・ジャパン体制を構築しないと、約7千枚と予想される次期東京オリンピックで使う国旗を、アメリカやオーストラリアなど外国に発注しなくてはという事態も、あながち杞憂ではないのです。IOCもできるだけ国際入札をという意向ですし、間違いの許されない国旗のことですから心配です。

そのことは何度か組織委の幹部に申し入れてきましたから落ち着くべきところに落ち着いて失敗のない東京五輪になるものと、祈るような気持ちで見ています。私自身は、文科省、外務省などのOB、学者、旗関連事業者などと語らい「NPO法人世界の国旗研究協会」を立ち上げました。世界の国旗を日本中に普及したいのです。先の伊藤輝くんはその副理事長でもあります。

2015年5月16日付の朝日新聞夕刊に、1964年のオリンピック組織委で国旗の検査をしている写真が掲載されました。組織委競技部でご一緒した木下、出口、村瀬の3嬢と私(頭のみ)が映っています。大きな写真と共に朝日新聞(夕刊)に前田大輔記者のこんな記事が載りました。私を取材しての記事です。

競技場や選手村を彩る国旗。五輪に欠かせないものの一つだが、掲揚に細心の注意が必要なのは、ご存じだろうか。東京五輪の開幕まで1カ月あまりに迫った1964年9月初め、朝日新聞にこんな見出しの記事が載った。「間違ったら大変 気苦労な国旗係」。例えば、フィリピンでは上下を間違って掲げると「交戦状態」を意味する。政情不安定な国が多く、国旗のデザインが変わることも珍しくなかったです。

写真(略)は、赤坂離宮(現・迎賓館)の一室に広げられた国旗の見本だ。大会組織委は見本を各国のオリンピック委員会に航空便で送り、承認を求めた。逆さまの掲揚を防ぐために、留め金を工夫。掲揚係の自衛隊やボーイスカウトにはパンフレットを配り、入念に確認した。

大会期間中に色あせたり、破れたりしたら一大事。素材選びも難航し、有名アスリートが所属企業の製品を売り込むケースもあったという。「フジヤマのトビウオ」と呼ばれた競泳の古橋広之進は、大同毛織(現ダイドーリミテッド)のウールを、東京五輪の選手団主将を務めた体操の小野喬(たかし)は、東レのナイロンを組織委に持ち込んだ。

最終的には、それぞれの素材を国立競技場に15日間、掲揚し続ける耐用実験で決めた。9日目にウールがほつれ、11日目にナイロンの色が落ちた。残ったのは、東洋紡の「エクスラン」と呼ばれるアクリル繊維。富士山頂での耐光試験などで磨かれた技術の結晶だった。エクスランは72年札幌、98年長野の両冬季五輪でも使われた。5年後の東京五輪でも採用されることを目指しているという。

さて、2020年の東京オリンピック、実はまだ使用する旗布さえ決まっていないのです。このあと、206(IOC加盟国数)種類もの各国旗の仕様書をおそらく仏英日の3カ国語で作成し、国際入札をし、納品された旗を全部を厳密に検査し、各会場に配り、掲揚訓練を行うというプロセスになるのではないでしょうか。

加えて、オリンピック(五輪)旗、東京都旗たくさん必要になります。リオのオリンピックにIOCはすばらしい決断をしました。「難民選手団」をあたかも1つの国である間のように参加させることにしたのです。国旗の代わりに五輪旗、国歌の代わりに「オリンピック賛歌」を用い、開会式では開催国ブラジルのすぐ前を行進するというのです。IOCは難民支援に200万ドル(約2億2千万円)を拠出し、難民選手43人を支援しています。内、5~10人が記録的にオリンピック出場資格を得られそうなのです。

産経新聞の佐野慎輔特別記者によれば、「シリアからドイツに渡った17歳の水泳選手、イランからベルギーに来た女子のテコンドー選手、コンゴからブラジルに逃れた男子柔道選手」などがいるそうです。

猪瀬前都知事の辞任、新国立競技場建設の出直し、大会エンブレムの決定やり直し、聖火台設置場所決定の失念?…などなど、「組織委さん、どうしたのですか」と老生はハラハラしています。特に、国旗での失敗は国際問題になりかねません。重々、気を配り、慌てずに急いでください。

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